これまでに取り組んだ事件

税金裁判で、審判所に「審理記録を提出せよ」との命令出される

 松本市の機械部品組み立て業者・Sさんと穂高町の通信配線工事業者・Iさんが、十分な調査もしないままあまりに高額な更正処分をなした松本税務署長に課税処分の取消を求めている裁判で、長野地方裁判所は昨年9月2日に国税不服審判所に対し、審理記録の一部を提出することを命ずる決定をしました。これは、情報公開を求める世論の高まりの中、2001年12月1日から施行された改正民事訴訟法によって、公務員が作成保管する公文書についても裁判所の提出命令がなされやすくなった機会を捉え、施行と同時に申立をし、1年半の審理で国・審判所・監督官庁である国税庁こぞって反対する中で決定されたものです。この決定に従って裁判所に送られて来た審判所の記録を早速謄写し、これを証拠として提出しました。これまで非公開でいわば秘密のベールに包まれていた国税不服審判所の審理記録がおそらくわが国で始めて係争している当事者の目に触れた瞬間でした。この証拠提出によって、課税処分があまりにずさんになされた疑いが強まり、裁判所は、課税処分をした担当係官とこれへの不服申立である異議審理を担当した係官2名の証人調を決定しました。


税務署の違法調査に足かせ 
2人のケースはいずれも、争っている納税者の所得を異なる業種の業者の資料から推計した疑いが強まり、その真偽を明らかにするために審判所の記録が必要であったもので、すべての事件で審判所の記録を使えるということではありませんが、税務署の横暴な調査や課税処分がまかり通っている今、このような方法があることによって税務署との争いにバリュエーションが広がり、また、そのために違法な調査・処分をやりにくくしたことは確かです。「民商をやめたら更正処分しない」との脅しに屈することなく、1996年から既に8年間闘い続けているSさん・Iさんは、「ここまで税務署を追いつめることが出来た。全国の皆さんの役にも立てて嬉しい」とますます意気盛んです。(弁護士 毛利正道)

(しらかば 2004.8)

 

信州しらかば法律事務所

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