これまでに取り組んだ事件

遺留分権の具体的実現方法
金銭支払を命じた事例 遅延損害金の支払義務は判決確定から発生するとした(長野地裁諏訪支部H17年1月27日判決)

 現行の相続制度には、遺留分の制度があり、親の遺産に対しては(配偶者が死亡している場合)、子供は相続分の2分の1の権利があるとされていますので、子供が5人いれば各人は10分の1の権利です。これは、親が遺産を特定の相続人に贈与や遺贈をした場合、外の相続人が、10分の1に達するまで、贈与や遺贈をした財産をとり戻すことが出来るということです。この権利を行使するか否かは自由です。権利を行使する場合には、贈与らの事実を知ったときから1年以内に内容証明郵便などで、その権利を行使する旨の意思表示(遺留分減殺請求と言います)をしなければなりません。
 この減殺請求をすれば、その対象の財産に対して、遺留分権の割合による共有持分を取得したことになります。これを具体的に分けるには、話合いによる解決が出来れば問題がありませんが、話合が出来ない場合には、共有の持分確認あるいは、遺留分権の割合による所有権移転登記手続請求の訴訟を提起し、その判決に基づいて、共有物分割の手続きをとることになります。これでは手続きが煩雑になり、必ずしも当事者に満足を与えることにはなりません。それで受遺者が、裁判所の定めた遺留分の割合による相当額の価格弁償を求めた場合には、裁判所は、弁償額を定め、受遺者が弁償額を支払わなかったことを条件として、遺留分権の割合による共有持分の所有権移転登記手続きを命じることになっています。
 本件では、遺留分権利者も相当額の価格弁償を求めており、原告被告側とも価格弁償の相当額について争いがなかったため、その金額の支払いを命じたものです。
 民事裁判では、金銭の支払いを命じる場合には、その履行期以降については、年5分の割合のよる遅延損害金の支払いを命じることになっています。本件では、原告は遺留分減殺請求をしたときからの、遅延損害金の支払いを求めていました。裁判所は、弁償額は事実審口頭弁論終結時〔審理の最終日〕を基準として算定され、精算金の支払いは裁判所が判決によって命じることになっていることから、遅延損害金の支払いは、判決が確定した時とするのが相当であるとして、原告の遺留分減殺請求時からの遅延損害金請求を認めませんでした。(弁護士 菊地一二)

(しらかば 2005.4)

 

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