事務所ニュースしらかば

しらかば 第109

≪巻頭言≫
≪コラム(握手)≫
≪大日岳訴訟全面勝利和解を勝ち取る!≫
≪トンネルじん肺訴訟の歴史的解決≫
≪毛利栄子の ~県政さわやか報告~≫

 

≪巻頭言≫

お年寄りから安心を奪うな
 
 高齢化・少子化・格差・貧困化・不安定雇用・年金の記録漏れ、どれをとっても明るい話題ではありません。若者から「希望」を奪い、お年寄りから「安心」を奪う自公政治に国民の怒りは爆発し、参院選で、NOを突きつけました。
 最近、後期高齢者という言葉を耳にします。75歳以上の人を言う言葉で、来年4月から、独自の医療制度が始まる予定です。
 制度が始まれば、現在加入している国保や健保(被扶養者も含む)を脱退させられ、すべての後期高齢者が保険料の負担を求められ、ほとんどの人が、年金から「天引き」されることになります(65歳から74歳までの前期高齢者も国保料を年金から天引きされます)。保険料の額は、11月にかけて都道府県ごとに決められますが、政府の試算では月6200円(年7万4400円)で、すでに天引きされている介護保険料(全国平均月4090円)と合わせると、年金から天引きされる額は平均でも月1万円を超えることになります。高い保険料を取り立てる一方、保険から支払われる診療報酬を頭打ちにし、保険で見る治療を制限しようとしています。
 これには、「後期高齢者という医療費のかさむ年齢層」の「総医療費を抑制することが新制度の狙い」と厚労省幹部も批判しています。
 老後の安心のためにも、制度の凍結と全面見直しも求めましょう。(福田内閣誕生の日・M)

 

≪コラム(握手)≫

 「人間の活動を支えきれなくなった地球」。これは、最近読んだ著書「地球のなおし方」の一文です。1950年には25億人だった世界の人口も、現在では60億人を超えています。世界の工業生産も増え続け、大気中の二酸化炭素濃度も急上昇しています。
 先ほどの一文の意味は、「人間の現在の資源消費量は、地球が支えてくれる力(扶養力)を20%も上回っている」ということです(少々分かりにくい表現ですので、興味のある方は著書をごらんになってください)。
 もっとも身近に感じる地球環境の変化は、温暖化とそれにともなう異常気象です。近年の夏の暑さや集中豪雨が印象的です。温暖化の原因の一つとして、二酸化炭素などの温室効果ガス濃度の上昇が考えられます。
 我が家は今年、散水用の雨水タンクを購入しました。残念ながら、今年の夏は夕立もなく、ほとんど利用できなかったですが。「地球の手当て」には、一人一人がリサイクル、省エネなど、できることから始めてみることが大事だと思います。(T・N)


≪大日岳訴訟全面勝利和解を勝ち取る!≫

                  大日岳雪崩遭難死亡事故国賠事件弁護団
             弁護士 中 島 嘉 尚(あるぷすの風法律事務所)
1.大日岳雪崩遭難死亡事故とは、文部省(当時)の登山研修所が、2000年3月5日、富山県大日岳で実施した、大学山岳部リーダー研修会において、同研修所の講師が、登山ルートの選定を誤り、雪庇(雪庇とは、単なる庇状のもののみならず、稜線より風下側にできる雪の吹きだまり状のものも含み、時に大きなものに発展し、稜線を見誤らせる原因となる。そのような吹きだまりに入れば雪庇が崩壊する危険性がある。国は、当時は40メートルの規模の吹きだまりができていたために、そのような規模の吹きだまりを予見できなかったと主張)に受講生らを進入せしめ、その結果雪庇が崩壊し、転落した受講生のうち、2名の大学生(神奈川県在住と、兵庫県在住)が雪庇崩壊により発生した雪崩に巻き込まれ死亡した事故です。
2.第一審判決、富山地方裁判所は、講師のルート選択に過失があったことを認め、被告国に対し、原告らに損害賠償を命じる全面勝訴の判決を言い渡しました(提訴の日、2002年3月5日、一審判決の日、2006年4月26日)。国は控訴手続きを取り、名古屋高裁金沢支部に係属しましたが、準備手続きを経た後、第一回の口頭弁論手続きで結審となり、同時に職権和解勧告がなされました。当方は、第一審判決に従うことを前提条件として和解手続きに応じました。和解手続きでは、命の値段を削ることは絶対に許さないこと、これに安全対策と謝罪を求めました。
3.その結果2007年7月26日、名古屋高裁金沢支部において、全面勝利和解というかたちで終結することができました。以下和解内容の要旨を述べます。
① 国は、損害賠償については富山地方裁判所の判決の結論部分に全て従い遅延損害金の全額を含めて支払う。
② 今後の安全対策については、文部科学省において、本件訴訟において明らかとなった本件事故に関する事実関係を踏まえ、本件事故を教訓として、幅広い有識者により構成される安全検討会(仮称)を設け、遺族原告らの傍聴を含めた公開のもとに、遺族原告らや国民から広く意見を求め、これを十分考慮のうえ検討する。
③ また、上記和解手続きに付随して、和解本文には入れませんでしたが、お詫びに関し、文部科学省当局の書面による約束を得ました。その内容は、文部科学省のスポーツ青年局長と生涯スポーツ課長が、それぞれの遺族原告宅に出向いて、死亡した2人の学生の遺影と遺族に対して、これまでの対応も含めてお詫びをする、という内容です。
4.この全面勝利和解には前文がついています。その内容の要旨は、「本件事故と同種の事故が再び発生することのないように、十分な安全対策を検討した上で、本件事故を教訓として、若い世代に山の文化を発展させて行くことが可能となるように、当事者双方に対し、和解による解決を勧告し、これを受けて、当事者は、本件を和解により解決することに合意した」というものです。
 この前文により、和解の目的がより一層明確になり格調の高いものとなりました。おそらく国相手の訴訟でこのような峰を築いた和解は余り例がないのではないでしょうか。その意味で画期的であり、他の事件に大いに参考にしてもらえるのではないでしょうか。
5.この事件で大変だったのは、原告が神奈川、兵庫、弁護団は長野、裁判所は富山、石川と分散していたことでした。原告や支援者とともに何回も弁護団会議を開きました。必ず皆で意見を出し合い訴訟の方針を決めました。又、長野県の各弁護団のメンバーは経費を節約するために富山、石川まで相乗りをして裁判所に通いました。苦しい中の楽しみは毎回帰りに富山のお寿司屋さんで生きの良い魚を食べることでした。
 更に現地調査を何回も実施し弁護団も大日岳に登りました。山に行く度に新しい発見が出来、裁判の主張に活かすことが出来ました。思い出深かったことは、大日岳から称名(しょうみょう)川までほぼ真直ぐ降りるルートを下降したときのことでした。私は足がいうことをきいてくれなくなってしまい下降に難儀をしましたが、S先生は、私より若いのでさっさと下降していきました。しかし地獄がその後に待ちかまえていました。降り切ったと思いヤレヤレとS先生は先にビールを飲んで休んでいました。ところが降り切ったと思った場所はまだ全体の半分で更に下降しなければならず、S先生はビールを飲んで酔いが回って大変苦労をして降りられたようです。
6.この裁判の支援も大変なものでした。究明する会や国民救援会により富山、石川、神奈川、兵庫を中心に支援体制と組織が結成され、長野も支援に加わりました。裁判所、文部省に提出した署名数は実に30万筆以上にのぼりました。
 又、日本共産党の井上哲士参議院議員の協力もいただくことが出来ました。勿論一番苦労したのは、遺族原告の皆様ですが、それに加え山岳の専門家の協力や善意の人々に支えられて、総力戦で裁判を勝利するまで闘うことが出来たことは、弁護団にとって大変貴重な経験でした。
(しらかば 2007.10)


≪トンネルじん肺訴訟の歴史的解決≫

1.平成9年12月、トンネル工事に従事していた人達(元トンネル坑夫)が、ゼネコンに損害賠償を求めて、長野地方裁判所に訴えを提起しました。長野だけではなく、全国23の裁判所で、最終的には総数約1500人にもなる大規模な裁判でした。
 裁判の原告となった坑夫達は、全員、「じん肺」という不治の病になっていました。長年、トンネルの掘削作業をしている間に、大量の粉じんを吸い込み、「じん肺」という病に冒されてしまいました。
2.当初、このような裁判がやれるのかという心配もありました。というのも、トンネル坑夫というのは、全国のトンネル工事現場を渡り歩く人が多く、団結した行動などとは、全く無縁の生活をしていた人達だったからです。

 しかし、その心配は、全くの取り越し苦労でした。その後、裁判は、トンネル坑夫達の要求のとおり、ゼネコンから謝罪とともに損害賠償も勝ち得ることが出来ました。病に冒された体にムチうって全力で闘った坑夫達には、本当に頭が下がる思いです。
3.ところで、裁判の目的は、「謝れ、償え、なくせ」じん肺ということにありました。
 ゼネコンとの裁判では、「謝れ、償え」という点は達成できたのですが、「なくせ」という点は達成できませんでした。もちろん、ゼネコンとの裁判の中で、ゼネコンに対して、これ以上じん肺が発生しないよう防止対策をすること、裁判という大変な手続をしなくてもじん肺患者を救済する基金制度(ADR)を作ることも要求しました。しかし、ゼネコンは、国が積極的に関与するのでなければ無理だというばかりでした。
4.そこで、平成15年9月、トンネル坑夫達は、国を相手として、じん肺防止対策をとらせることを主たる目的として、再び裁判をやることにしました(長野を含め、全国11の裁判所)。自分達は、前のゼネコン相手の裁判で賠償金を獲得していますので、将来のじん肺発生を何とか防ぎたいという純粋な気持ちからでした、
 その後、トンネル坑夫達は、裁判所における訴訟活動だけではなく、裁判所外における運動に、命懸けで取り組みました。
 坑夫達の熱意の成果として、まず、東京地方裁判所をはじめとして、5つの裁判所が坑夫達の訴えを認めました。国がじん肺防止対策をしなかったことは違法であるというものでした。
 裁判所の判断を受けて、平成19年6月ついに国(厚生労働省、国土交通省)も、これまでのやり方を改め、じん肺防止対策を実施することを約束し、トンネル坑夫達と文書による約束をするに至りました。
5.残る課題は、国にじん肺防止対策をしっかりと実行させることです。また、裁判をしなくても、じん肺患者を救済できる制度(基金制度)を創ることです。
 坑夫達は、この2つの課題を解決するために、今も全力で取り組んでいます。
弁護士 相 馬 弘 昭  (しらかば 2007.10)


≪毛利栄子の ~県政さわやか報告~≫

 少子化なのに子供が産めない!長野県のお産事情深刻

 奈良県内の妊婦さんが、受け入れてくれる医療機関がなく3時間後にとうとう死産してしまったという悲しい事件がおこり、衝撃が走っていますが、これは決して人事ではありません。
 国の医療費抑制政策のもとで、医師の養成を抑え、研修制度も変えたために、全国的に医師不足が深刻で、特に勤務医に顕著です。なかでも産科は24時間365日休むこともできず、勤務がとてもハード、何かコトがあればすぐ訴訟になるということで、希望する人も年々少なくなっているのが現状です。所属委員会が「社会衛生」ということでこのところずっと県内の医療機関に調査に行っています。飯田下伊那地方では13あった分娩施設が3ヶ所になり、上伊那でも昭和伊南病院が分娩を取りやめ、辰野病院もすでにやめており、伊那中央病院で一手に引き受けなくてはならず、2割あった里帰り出産は断らざるを得ない状況が出てきています。
 県では国の方針同様、緊急避難的にということで2次医療圏に1ヶ所に集約して分娩を残す方策をとろうとしています。これだと諏訪地域で1ヶ所、上伊那地域で1ヶ所、飯田下伊那地域で1ヶ所ということで、産気づいてもとてもまにあいません。党県議団ではこの難局を切り抜けるために、助産師さんの活用や出産、育児で休んでいる女医さんが復帰できるよう提案していますが即効性がありません。「しらかば」読者の皆さん、ぜひ長野に来てくれるお医者さんを紹介していただけませんか!


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