事前学習で、教育・福祉に力を入れている国であることをかなり勉強したつもりでしたが・・・
弁護士 毛 利 正 道
子どもの世界で
- ① 保育所では、20人以下1グループ用の部屋が、なんと4つもあること。お昼寝兼プレイルーム・机でお遊びの部屋・ソファーのある部屋などそれぞれ結構広い。
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お昼寝用など部屋が4つもある保育所 |
- 「なるべくお家にいるときと同じ環境を与えるためです」との説明。
- ② 小中学校では、授業中に先生が特に質問している場面でなくても、子どもがちょくちょく手を挙げ、先生が聞くと、なにか発言するのです。ガイドいわく「いつものことですよ」。子どもたちの積極性に感心。
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大型ポスターになった障害児の絵 |
③ 市立「アンナの家」では、毎年ヘルシンキ市内の小学生の一学年5千名全員に、プロの芸術家による10時間のレッスンを無料でしています。陶芸・ダンス・演劇・ビデオ制作・人形劇・写真などなど。むろん、学校での豊富な文化関係カリキュラムの他にですよ。それも、「プロが芸術に取り組む情熱を子どもたちに伝えたい。特に、芸術に縁がないような家庭で育っている子どもらに」との気持ちで始めたとのこと。
④ 9名の女子高校生との楽しい交流会で、通常、現在も卒業して自立してからも週末は森のコテージに行って家族とゆっくり過ごしている、と聞いたこと。それよりも、みんなカラフル・ファッショナブルで、「この服装で学校に行っている」と答えたこと。
大人の世界で
① 百万人が加入している労働組合総連合で国際部長に、「企業の国際競争力が強い原因は?」と問うたところ、即座に「第1に教育」と答えたこと。これは本物だわ、と思いました。むろん、非正規雇用であっても、同一労働同一賃金が貫かれているとのことでした。
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高齢者施設の美的な個室 |
② 障害者・痴呆症の人43名が入居する市立高齢者グループホームで、個室が広くてきれいで花と芸術がいっぱいだったこと。しかも、入居者個々に独自のケア計画がありかつ担当のスタッフがいること。
③ 心の病を持つ人へのサポートをしている全国組織フィンランド精神保健協会で、患者や元患者がほかの患者に話しかけサポートする「ぺアサポート」システムが有効に機能しているとのこと。
④ 街なかも、森のなかの道路でも、どこにもゴミひとつ落ちておらず、建物も風景もどこに行ってもきれいなこと。欧州をよくご存じの方も「ここは特別にきれいだ」。
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あまりにもきれいな街 |
環境維持可能指数=環境保護熱心順位が世界一の国なればこそ。
「ルールなき競争社会」でなく、「ルールある共同社会」を、ここ日本でも!
教育でも、コミュニティでも、企業社会でも、競争でなく、人と人との繋がり=共同を大切にしているように思える国に行き、日本を覆う競争格差孤立分断社会を打開するキーワードを探したい。そんな思いで、私が理事長を務める長野県AALA(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会)が企画したツアーに老若男女12名が参加してこの9月、8日間にわたりじっくりフィンランドの諸施策を視察しました。 研究者・教師・農業経営者・福祉施設従事者・青年など一家言持つ参加者と本音で意見交換しながら、いろいろな角度から視察先に質問する、これがまた良く、特色を立体的に把握することができました。
教育改革が社会をも変えた
そこで得たものは、日本の教育基本法を生かした、すべての子どもに創造力と問題解決力を育てるために競争を排したグループ学習など共同での教育を40年間にわたって進めてきた結果、福祉・企業経営・環境保護など多くの分野で大人社会も共同を大切にするものに変わってきているとの実感でした。
しかも、これらの改革は、比例代表による200名の議会で、きちんと法律という方法でおこわれて来ているのです。まさしく「ルールある社会」をそこに見ました。ここ日本でも政治を変えればそのような社会を創り出せる、このような抱負を抱いて帰国しました。
(しらかば 2008.11)
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