事務所ニュースしらかば

しらかば 第114

≪巻頭言≫
≪2008年を振り返って≫
≪毛利栄子の ~県政さわやか報告~≫

 

≪巻頭言≫

いよいよ始まる裁判員裁判
 今年5月から、いよいよ裁判員裁判が始まる。国民の中から選ばれた6人の裁判員が、3人のプロの裁判官とともに、殺人や強盗致傷などで起訴された被告人を裁くことになる。
 2001年6月に司法制度改革審議会答申が出てから8年、制度の是非について多くの議論がなされてきたが、実施目前のいまでも、国民の理解を得られているとは言い難い。
 昨年12月の長野県弁護士会臨時総会でも、「5月実施」か「延期」かをめぐって熱い議論がたたかわされ「5月実施決議」が議決されたが、わずかの差だった。
 大きく変わる刑事裁判の姿
 裁判員裁判は、これまでのわが国の刑事裁判の姿を根本から変えるものであることは間違いない。
 これまでは、捜査官が密室で作り上げた膨大な量の「調書」が公判廷にどっと提出されて、それを裁判官が法廷外で読み込んで、有罪判決が下された。
 警察官や検察官の捜査を基本的に信用している官僚裁判官が、「自白調書」を認めず「無罪判決」をすることなど、めったになかった。
 弁護側が「調書」を証拠とすることに同意しない時は、時間をかけて「調書」に代わる「証人調べ」が行われるが、その結果もおおかた「調書」の内容が再現されるだけであった。
 しかし裁判員は、膨大な調書を読むことなど到底できない。延々と証人調べを続けることも、時間の制約で無理だ。公判は、おのずから目で見るもの、耳で聞くものになり、短期日集中型にならざるを得ない。
 短期日の審理で大丈夫か
 そこで、作り出されたのが「公判前整理手続き」というやり方だ。
裁判員が参加する公判の前に、裁判官と検察官と弁護人が打ち合わせを重ねて、争点と公判で調べる証拠を絞り込む。そして公判開始から判決まで原則3日間でやってしまおうというわけだ。
 こんな裁判のやり方で、はたして真実が発見できるのか。「冤罪」がなくなるどころか、かえって増えてしまうのではないか。このような裁判で「死刑判決」をして本当にいいのか。裁判員裁判の是非が問われる核心がここにある。
 重くなる弁護人の職責と負担
 ともあれ、裁判員裁判が始まる。問題の多い制度のもとでも、無辜の者が罰せられることは絶対にあってはならない。刑事弁護人の職責と負担は、格別に重くなることだけは間違いない。
(木嶋記)

 

≪2008年を振り返って≫

しらかばの会発足 

 近頃は一人ひとりの人間が、大勢の中にいても孤立していることが多くなり、複雑な社会問題をよく知ったり、話し合ったり、大勢で楽しんだりする場も少なくなっています。そこで、事務所の依頼者の皆さんもお誘いして、ワイワイ楽しみながら横のつながりができるような会を作ろうと想起しました。
2008年2月、ハンセン病の元患者、谺(こだま)雄二さんを招いた講演会で会の発足を呼びかけました。茅野市の元市議会議員の方に会長に就任いただき、3月13日に、「日本共産党を応援するしらかば法律の会」(通称「しらかばの会」)が結成されました。現在会員数は100名を超えています。
結成以来の会の取り組みは、5月には「後記高齢者医療制度の学習会」を行いました。諏訪共立病院の方のお話。新たに保険料を取られるお年寄りばかりでなく、医療機関にとっても、よい医療を目指せば赤字になるような制度であることが良くわかりました。7月には「画期的なイラク派兵違憲高裁判決から恒久派兵法の危険性をみる」講演会を行い、原告として自衛隊のイラク派兵は憲法違反との勝利判決を勝ち取った毛利弁護士の講演と、名古屋高裁の法廷でも上映されて、裁判官の心を動かした、イラクの現状のDVDを見ました。続いて8月は、話題の小林多喜二の小説「蟹工船」の映画上映会。映画にはなかった、小説の最後「労働者が団結する場面」を朗読で上演しました。そして10月には「赤旗信州秋まつり」で日本共産党委員長志位和夫氏の記念講演を聞きました。政治の中身を変えようという、パワーを結集し、総選挙では必ず勝利しようと思いました。11月には、長野県AALA(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会)の視察でフィンランドを訪問した毛利弁護士の講演とパネル展示などのミニフェスティバル「びっくりしたフィンランド」を開催。教育や福祉、労働環境など、格差や戦争がない、ルールある共同社会の様子を知りました。
もっと多くの方々に会に参加してもらうよう、これからも「ためになる、力になる、楽しめる」ような企画を、会員の希望も取り入れて計画していきたいと思います。ぜひ「しらかばの会」の会員になってください。

 

 

伊那市政に喝!
 07年から08年にかけ、伊那市に対し2件の住民監査請求が申し立てられ、その後2件とも住民訴訟へと進みました。
 第1の監査請求は、伊那市土地開発公社が行った契約が地方自治法で定められた競争入札とは全く異質な「見積もり入札」と称する方式で行われ、その結果、97.9%の高落札率で特定の一業者が平成14年度と同17年度の測量設計許認可業務契約のすべてを独占していたことに対しなされたものです(関連記事しらかば111号)。同監査請求は却下されましたが、住民訴訟においては、契約を独占した業者が他の同業者に対し自社より高額な見積額を届け出るよう指示したメモが証拠として出されるなど談合の核心部分へと迫っています。
 第2の監査請求は、伊那市が伊那地区住所表示変更業務委託契約をなすに当たり、市内の測量業者9社に組合を作らせ、同組合との間で契約額1600万円余の委託契約を随意契約で行ったことの違法性を問うものです(契約額が50万円を超えた場合は競争入札によらなければならないとの法令違反)。また、委託業務の内容自体に測量業務がほとんどなく、関係区長の協力があれば市の職員でも容易に行える業務であったことから、契約額全額の支出が違法であるとして争っています。
 こうしたなかで、伊那市に新たな動きが出てきました。一つは、昨年の10月に公社が「伊那市土地開発公社財務会計規定」を作成し、その中で公社が行う契約については「伊那市が行う契約の例による」と定めたことです。これは市が、見積り入札の違法性を認めたうえで、今後は、地方自治法に定められた契約方法をとることを自ら宣言したことに他なりません。また、ここ1年足らずの間に、一般競争入札の入札率がそれまでの90~100%の高率から、20%、50%、70%と低率に推移しバラツキが生じるようになってきたことです。加えて、公正な入札のための入札監視委員会設置の動きが市の主導により具体的になりつつあることも大きな変化です。
 まさに、住民運動により伊那市政に喝が入った1年でした。今後ともご支援を宜しくお願いします。
(しらかば 2009.1)

 

 

サラ金・多重債務

 2006年12月、みなし弁済規定の廃止(グレーゾーン金利廃止)による高金利の引下げ等の貸金業法が改正されました。この改正により、遅くとも2010年6月までには、改正貸金業法が完全に施行され、みなし弁済規定は廃止されることになります。
個人の破産申立件数やサラ金5社以上借り入れのある多重債務者は減少しています。多重債務者の減少傾向は、法改正やこれを受けた多重債務者対策の成果であり歓迎すべきことです。
しかし、未だ、サラ金の利用者は1400万人、そのうち返済困難に陥っている多重債務者は200万人も存在していると言われています。この返済困難な多重債務者数を諏訪地方に当てはめてみますと3300人以上になりますので、諏訪地方でも多くの多重債務者が存在していることが窺えます。
多重債務者の中には、借りたものは返さなければ、と法的手続きも任意整理もせずにまじめに長期間返済し続けている方がいます。事務所で扱った一つの事例を紹介します。
ある女性の方ですが、昭和58年ころからサラ金業者と取引をし、相談時には、9社に対し約600万円もの債務を抱え、月々15万の返済が困難になっていました。早速取引履歴を開示させ、利息制限法に基づいて計算したところ、1300万円もの過払金が生じていました。返還請求をして最終的には1000万円の返還を受けて解決しました。
このように、取引履歴の長い場合は殆ど過払いとなりますし、完済した場合も間違いなく過払いとなりますので、返還請求が可能です(時効の問題はありますが)。銀行などで、サラ金業者に対しまとめて返済するための融資をしているところがありますが、この場合も、サラ金業者に対しては完済することになりますので、過払い金の返還請求が可能となります。
利息制限法に基づく計算をして借入金債務が残っていた場合でも、債務額を減額させ、将来利息も付けさせずに長期分割払いの和解をすることもできますので、お困りになっている方は、速やかな解決につながる法律事務所に相談されることをお勧めします。
(しらかば 2009.1)


≪毛利栄子の ~県政さわやか報告~≫

介護保険料はもう払わない、払った保険料を返してほしい!!

 先日、妻に先だたれ90歳で一人暮らしをされている老人のお宅を議会報告をお届けしながら訪問。体が不自由らしく玄関に出てこられるにも時間がかかります。じっと待っていると壁をつたいつつ出てこられましたが、いきなり「ちょうどいいところに来てくれた。聞いてもらおうと思っていた」と気色ばみながらのお話。障害手帳も持っている身でいろいろ大変になってきたので介護認定を受けてせめておかず作りだけでもヘルパーさんを頼みたいと思っていたが、自分でなんとか歩けることもあり、認定からはずれ、援助してもらえないことになったとのこと。「何のために高い介護保険料を払っているのか。払っても使えないならもう払わない。払った保険料も全部返してほしい」とお怒りです。国は介護保険の給付費を減らそうと認定を厳しくしたり、使えないように制度を変えてきました。その結果、家族がいても昼間一人になり寝たきりに近い方々でもヘルパーを使えない事態が全国各地でおこってきました。抗議の声が高まる中、厚労省は機械的な対応を改め柔軟な対応をするよう通達を出しましたが、現場ではまだまだ矛盾があります。ケアマネの皆さんも苦労されていますが、国の抑制政策の犠牲になっています。私はさっそく、11月議会の社会委員会でこの問題を取り上げ、国の通達に沿い、実情に見合った柔軟な対策をきちんと取るよう求めました。社会保障費を毎年2200億円削り続ける政治は変えないと。県議会でも全会一致で画期的な「削減やめよ」の意見書を国にあげました。


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