事務所ニュースしらかば

しらかば 第115

≪コラム(握手)≫
≪貧困に負けてたまるか ー反貧困セイフテイーネット・アルプスを立ち上げるー≫
≪働くものの権利シリーズ 派遣労働者はものではない≫
≪毛利栄子の ~県政さわやか報告~≫

 

≪コラム(握手)≫

 先日「井戸の茶碗」という落語を聞きました。くず屋の清兵衛は、貧しい浪人卜斎から仏像を二百文で預かります。その仏像を武士の作右衛門が三百文で買い取ったのですが、なんとその中から五十両もの小判が出てきます。「仏像は買ったが五十両は自分のものではない」と返そうとする武士。しかし、貧しくても武士の誇りを失わない浪人は「先祖が遺してくれた物を売り渡した自分が悪い」と断固として受け取りません。二人の間を行ったり来たり…くず屋のドタバタぶりに大笑いしながらも、「私欲」の一片もない三人の清廉さに涙が溢れるほど感動しました。
 構造改革が格差社会を生み出し、富める者はとことん富を追求する…金融危機でいざ前途が怪しくなると、それまで身を粉にして働いてきた者を真っ先に路上に放り出す。そこにはこの落語に漂う「清らかさ・温かさ・品格」が一切存在しません。自己の利益につなげる違法献金にしても然り…政界を汚染し、世間に政治不信を引き起こしています。
 落語にはもう一顛末ありますが、最後には全ての登場人物にハッピーエンドが訪れます。「正直に、懸命に生きるすべての登場人物が幸せになる世の中に」…落語の世界から現実社会に向け、切実な思いがよぎりました。(智)

 

≪貧困に負けてたまるか ー反貧困セイフテイーネット・アルプスを立ち上げるー≫

 1、最初に、零式戦闘機の話をします。反貧困と如何なる関係にあるか、それは話を聞いてから考えて下さい。零式戦闘機は略称ゼロ戦と言われるので以下はそういいます。ゼロ戦は一時期世界の中で最も優れた戦闘機と言われたことがありました。航続距離は長く、速力と旋回能力に優れていたからです。なぜそんな飛行機が出来たのか。それは飛行機の重量を極限まで軽くしたからです。飛行機を軽くするために操縦士を銃弾から守るための安全対策を無視しました。戦闘機同士の戦いは巴戦で後ろを取って射撃し撃墜をするのが普通でした。そうすると操縦士を守るためには操縦席の後部には銃弾が貫通しないような分厚い鉄板を設けなければなりません。ところが、このような鉄板を設けることは、飛行機の重量を増やすことになるので、これを設けなかったのです。その結果、性能は優れていても、操縦士を次々と失うことになるという結果を招きました。セイフテイーの欠如です。
 2、今の日本の経済力は世界第2位と言われています。このような経済的実力があると言われながら、今、どうして貧困問題が起きているのでしょうか。
 3、今、お年寄りは国民年金だけでは到底暮らしてゆけません。国民年金は自営業者が加入してきたものです。昔は、たとえば町で店を経営していた人たちは、年をとっても店の営業が続けることができ、年金と合わせて何とか暮らしてゆけました。ところが、規制緩和により地方では大企業による大型店舗が続々と出来るようになりました。その結果起きたことは地方の町の空洞化でした。シャッター街通りと言われるように、町は死にたえ、商店街の自営業者は営業が成り立たなくなりました。政府は規制緩和をしながら、セイフテイーネットを考えることをしなかったので、町の高齢化した自営業者には貧弱な年金のみで暮らさなければならないという無残な結果だけが残されました。
 4、日本の大企業は、世界に冠たる利益を上げているといわれています。しかし、この背景には規制緩和の名の下に作られた、労働者を安く使い捨てにするシステムがあります。その典型が派遣労働制度です。これによって、労働者を低賃金でこき使い、不必要になればいつでも労働者の首を切ることが出来るようなシステムを作りました。その結果大企業は世界に冠たる大儲けです。一方、労働者は低賃金で、捨てられれば明日の住み家も生活費も得られなくなり、路頭に迷わされるということが起きています。人間として結婚し家族を持つなど夢のまた夢という現実があります。派遣労働制度そのものがまったくもって許し難い制度ですが、しかしそのような制度により今日の事態が起きることは予測できたはずです。それなのに政府や大企業はセイフテイーネットをすら構築してこなかった。
 5、日本の政府のやることは、戦前も今も変わっていません。国民の命や生活など大切にするということを真剣に考えているとは到底思えません。全く腹立たしい限りです。大企業も同罪です。
 6、日本政府の無責任と大企業の身勝手に、腹が立って仕方がないので、「反貧困セイフテイーネット・アルプス」を皆で立ち上げました。私は、名称を「反貧困セイフテイーネット・闇航船」でどうかと提案しました(半分は冗談でしたが)。「蟹工船」をモジって、リストラ・貧困の嵐と大波の暗闇のなかに希望の光を掲げて航行する力強い船を意味したものでしたが、皆から、「闇金」のようだと総スカンをくらい、あえなく諦め、わが事務所の名前と似た「アルプス」になってしまいました。
 7、「アルプス」は、弁護士や病院、民商、地区労連、生活と健康を守る会、共産党など、それぞれが得意な分野で力を出し合い、連携をしながら解決にあたろうとするものです。フリーダイヤル(0120-978-790)を設け常時相談を受け付け、関係団体に直ちに協力を求めることができる体制を作りました。また、行政による解決が求められることが多いことから、共産党の議員さんに多いに活動してもらうために、共産党にも構成メンバーに入ってもらいました。
 8、まずは、創立集会として、去る3月8日に派遣村名誉村長の宇都宮弁護士を招き講演をいただきました。短期間で企画したにしては大入り満員でこの問題に対する市民の関心の深さと怒りの強さを知りました。今後は情報の共有化や、戦いと援助の在り方、生活支援関連制度の周知などについて構成メンバーが大いに勉強し、効果的な活動を行ってゆく必要があります。たとえば、首切りによって生活の本拠を失った人たちが当面生活が出来るようなシェルターのような施設を行政に作らせることなどには早急に取り組んで行こうと考えています。
 9、長野県各地に設立されてゆくであろう「反貧困」の団体と大いに力を合わせたいと考えています。


≪働くものの権利シリーズ 派遣労働者はものではない≫

派遣労働者保護法の抜本改正は急務!
 かつて派遣業は禁止されていました。それを合法化したのが1985年の労働者派遣法の制定です。当初は、専門業務に限定されていましたが、その後、規制緩和を求める財界の要求により1999年には対象業務を原則自由化し、2004年3月には製造業務への派遣を解禁しました。この結果、大企業は労働者を都合よく利用して利益を上げる一方で、労働者側は雇用不安・生活不安を増していきました。現在、アメリカ発の金融危機による景気悪化を理由に大企業による派遣契約の一方的打ち切りによる派遣労働者の切り捨てが行われ、生活破綻をきたした労働者が路頭に迷う事態が社会問題化しています。労働者保護につながる派遣法の抜本的改正は正に急務です。

派遣労働者の権利を知ろう
■派遣切り
 労働者派遣契約(派遣先と派遣元との契約)は、期間を定めて締結されます。派遣労働者が遅刻や欠勤、重大なミスを繰りかえすなどした場合には、派遣先は派遣元に対し派遣労働者の交替を要求したり、場合によっては派遣契約の中途解除を主張できますが、派遣労働者が問題なく普通に仕事をしている限りこのようなことは許されません。
 仮に、このようなケースで無効な中途解約がなされた場合はどうでしょうか。まず、派遣元は派遣先に対し派遣契約の継続や損害賠償を請求することが出来ます。また、派遣先が派遣契約の中途解除に応じてしまっても、派遣元は労働者を解雇できません。派遣元と派遣労働者との契約が有期契約の場合には、期間途中の解雇は「やむを得ない事由」がなければ出来ないと定められておりますので、やはり解雇はできません。
 それでは、期間満了を理由に雇い止めを言われたらどうでしょうか。「派遣契約の期間中更新し、存続することが予定されている場合」あるいは「長期派遣を前提に何回か更新している場合」には更新拒否・雇い止めには解雇に関する法理の類推適用が認められますので、派遣元の雇い止めは無効と評価されます。
■その他の権利
 派遣労働者であっても労災保険が適用されます。派遣元が労災保険に入っていない場合でも派遣元に未納付の保険料を全額納めさせれば労災保険が認められます。また、社会保険や雇用保険についても一定の要件を満たせば加入資格が認められます。この他にも、派遣社員の有給休暇の取得や直接雇用の要求など知っていれば救われることが沢山あります。
 問題が発生したらひとりで悩まず、まずはお気軽にご相談下さい。


≪毛利栄子の ~県政さわやか報告~≫

09年2月議会報告  西松建設の裏金問題で真相究明を

2月議会の冒頭、ショッキングな事件がおきました。
 村井知事の衆議院時代の公設第一秘書で、任期付き職員として部長待遇であった右近参事が、西松建設の裏金献金問題にかかわって、東京地検特捜部から3日間の事情聴取を受けたあと突然自殺してしまったのです。
 いまやこの問題は民主党小沢党首の秘書が政治資金規正法違反で起訴される事件に発展し、西松建設のダミー団体を通じて政治家に4億円を超える違法献金がされた疑いが濃厚になる一大政治事件になっています。西松関係者の話によると県知事選の前後に村井知事関係者に1000万円が渡されたとしています。さらに衆議院議員時代にダミー団体である「新政治問題研究会」に20万円のパーテイ券を買ってもらったことも収支報告書に記載されています。

議長へ「真相究明を」と申し入れしているところ

 この問題で党県議団は知事に県民に対する説明責任を果たすべきと迫りましたが、知事は「何があったのか一切わからない。自分に掛けられた嫌疑をどう晴らしていいかわからない」と無責任な態度に終始。議会にたいしては議会運営委員会で私が、各派代表者会議で石坂県議が、総務委員会で小林県議が真相究明のために「集中審議」や「特別委員会の設置を」と重ねて求めましたが知事与党的な4会派や議長は「必要ない。検察の捜査を見守る」と拒否。いったい何があったのか、真相は依然闇の中です。「あの事件はもううやむやになってしまうのか。」県民から議会不信の声があがっています。田中知事時代は100条委員会まで作って血道を上げたのに、このままでは議会への信頼が損なわれます。


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