事業主の労働条件に関する文書交付義務
パート労働者(通常の労働者に比べて1週間の所定労働時間が短い労働者)の場合には、契約期間、就業時間、賃金などの労働条件が個々に決められることが多いので、就業規則で定型的に定められる正社員に比べて、労働条件が不明確になりがちです。入社時においては、労働条件が不明確なまま働き始めるケースが少なくありません。
労働基準法では、雇い入れ時において、①労働契約の期間、②就業の場所・従事 すべき業務、③労働時間、休日、休暇、④賃金の決定・計算・支払方法、⑤退職・解雇に関する事項を書面で明示することを義務づけています(労基法15条1項、同規則5条)。改正パート労働法では、これに加えて、昇給、退職手当及び賞与の有無についても文書の交付などで明示することを事業主に義務づけました(パート労働法6条1項、同規則2条)。
したがって、後のトラブルを避ける意味でも、入社時に、これらの労働条件については、書面で明示するようきちんと要求しましょう。
パート労働者への差別扱いは許されない
パート労働者については、正社員との間に大きな待遇の格差があることが問題となっています。このため、07年にパート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が大改正され、差別的取り扱いの禁止や均衡処遇の努力義務などが盛り込まれました(08.4.1施行)。
■差別的取り扱いの禁止
同法は、①当該職場の正社員と職務内容が同一で、②契約上または実態上期間の定めのない雇用であり、③人材活用の仕組みと運用が長期的に正社員と同一であるパート労働者は、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」とされ、賃金、賞与、退職金、教育訓練、福利厚生その他すべての待遇について、短時間労働者であることを理由として差別的取り扱いをすることを禁止しています(同法8条)。
■均衡処遇の努力義務
「通常の労働者と同視すべき」とは言えないパート労働者についても、賃金は、通常の労働者との均衡を考慮して決定する努力義務が事業主に課されました(同法9条1項)。事業主は、パート労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験などに照らして、通常の労働者と均衡がとれるよう、賃金水準を見直したり、昇給制度を整備したり、職務手当・役職手当を整えることが求められます。
■待遇決定に関する説明義務
さらに、パート労働者は、事業主に、その待遇決定にあたって考慮した事項の説明を求めることができるようになりました(同法13条)。自分の待遇に納得がいかない場合は、事業主に説明を求め、適正な取扱いをするよう要求できます。
その他の権利
パート労働者にも休憩や年次有給休暇の権利があります。
労基法34条1項は、「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と定めています。
また、所定労働日数が週4日以下で所定労働時間が週30時間未満の労働者で所定労働日数が年216日以下の労働者でも、年次有給休暇がとれます(労基法39条3項)。
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