事務所ニュースしらかば

しらかば 第117

≪巻頭言≫
≪コラム(握手)≫
≪労働審判事件≫
≪パート労働者の待遇改善のために≫
≪もうり栄子の県政さわやか報告≫

 

≪巻頭言≫

 ごく最近の新聞で、住宅ローンの支払が出来なくなり、住宅を手放す人たちが急増しているという報道がありました。
 昨年の後半以降、諏訪地方の製造業の現場では、週休3日~4日などという状況が出現していましたので、どうなるのかと心配していましたが、新聞報道で数字が示されると、単なる心配では済まなくなっていることを実感しました。
 新聞報道では、ローンの支払が出来なくなった主な理由として、残業代・ボーナスの減少・カットなどによる給与の減少が挙げられていました。
 給与の減少が一時的現象であることを願いたいものです。ただ、住宅を守るためには、幾つかの方法があるはずですので、専門家に相談することをお勧めします。

 これだけだと、宣伝のように受取られかねないので一言。やはり、給与体系や生活設計を見直すことも必要ではないかと思います。景気の変動により給与の増減はある程度避けられないと思いますので、残業代・ボーナスに頼らなくても良い給与体系を目指すとともに、私たちの生活もクレジット(ローン)に頼らない体質に改善することは必要ではないでしょうか。

相 馬 弘 昭 (弁護士)

 

≪コラム(握手)≫

 中国の故事に次のような話があります。一人のきこりが石室山という山に入ったところ、そのきこりは童子たちが碁を打っているのを見つけました。その碁を眺めていたきこりは、童子から棗(なつめ)を貰い、空腹を感じることはありませんでした。しばらくして、童子から言われて、持っていた斧を見ると、その柄(柯)が朽(爛)ちていることに気付きました。きこりが山を下り村に帰ると、知っている人は一人もいなくなっていました。
 この故事は、囲碁に没入したときの時間感覚の喪失を斧の柄が腐るという非日常な事象で表わしたものです。囲碁はこの故事に由来し「爛柯」(らんか)とも言います。
 囲碁はどこが面白いのか。囲碁の特徴として指摘されるのが、着手の選択肢が無限にあるということです。ゲーム中の考えうる局面数は、チェスが10の120乗、将棋が10の220乗であるのに対し、囲碁は10の360乗と他のゲームと比べて着手の選択肢が圧倒的に多く、戦略的には非常に複雑なゲームと言われています。これが、チェスではコンピューターが世界チャンピョンを破り、将棋でもプロの実力に接近しているのに対し、囲碁ソフトの進歩がはかどらない理由の一つと言われています。
 囲碁は、その単純な構造の中に宇宙のように深遠なものがある。そういうところが面白いと言えるかもしれません。(山)

 

≪労働審判事件≫

1 当事務所に勤務し始めてから早くも1年と3ヶ月が過ぎました。毎日いろいろな経験をさせていただいていますが、今年を振り返って、特に思い出深い(まだ裁判続行中ですが)労働審判事件について、記載させていただきます。
2 今年の5月半ば頃、当事務所に会社から解雇されたという女性が来られました。お話を聞いたところ、その女性は、もう一度その会社で働きたいのではなく、解雇の仕方があまりにも理不尽なので、会社側にその旨を主張し、このような解雇が許されないということを分かってもらいたい、というお気持ちであることが分かりました。
 そこで、解雇の違法性を主張して慰謝料を請求することを決め、請求の手段としては、早期解決を期待して労働審判を申し立てることにしました。
3 労働審判手続は、裁判官1名と労働関係に関する専門的な知識経験を有する審判員2名から成る労働審判委員会が合議体を構成し、その過半数による決議を以て決定を下すという手続です。
 労働審判は、迅速な紛争解決を目的としているため、原則として3回以内の期日において審理を終結しなければなりません。また、労働審判においては、柔軟な紛争解決を図る見地から、積極的に調停が試みられています。
4 本件では、第1回期日で、いきなり審判員が2名とも、相手方(会社)に対し、相手方が整理解雇の要件のうちの説明義務を全く履行していないことについて、強い口調で質したり意見したりしましたので、少し驚きました。
 第2回期日では、和解が試みられましたが、残念ながら相手方に全くその気がなかったため、和解には至りませんでした。しかし、その場で、別途相手方が支払義務を認めていた十数万円の退職金を含めてではありますが、請求金額の3分の2の金額の支払いを命ずる審判が下されました。
5 その後、相手方から異議が出されたため、現在は地裁に審理の場を移して裁判続行中です。異議が出されたため、紛争の早期解決という労働審判のメリットが活かせなかったことは残念でしたが、労働審判をした意味はありました。依頼者の女性は、金銭を取得することよりも、会社のしたことが許されないものであることを、会社の代表者に分かってもらいたいというお気持ちを強く抱いており、下された審判の内容の外に、第1回期日において、審判員が会社の代表者に対し、強い口調で意見したことをとても喜んで下さったからです。

 労働審判においては、証拠調べは民事訴訟の例によると条文に記載されています。しかし、実際は、迅速な解決を図る見地からでしょうが、通常の民事訴訟のように厳格な調べはしないで、当事者に対し、頻繁に質問がされ、その回答の内容やその際の様子等により、心証が形成されることも多いようです。本件でも、審判員が相手方に詰問していましたので、労働審判の上記の特性が発揮されたと思います。

蒲 生 路 子 (弁護士)

 

パート労働者の待遇改善のために

事業主の労働条件に関する文書交付義務

 パート労働者(通常の労働者に比べて1週間の所定労働時間が短い労働者)の場合には、契約期間、就業時間、賃金などの労働条件が個々に決められることが多いので、就業規則で定型的に定められる正社員に比べて、労働条件が不明確になりがちです。入社時においては、労働条件が不明確なまま働き始めるケースが少なくありません。
労働基準法では、雇い入れ時において、①労働契約の期間、②就業の場所・従事 すべき業務、③労働時間、休日、休暇、④賃金の決定・計算・支払方法、⑤退職・解雇に関する事項を書面で明示することを義務づけています(労基法15条1項、同規則5条)。改正パート労働法では、これに加えて、昇給、退職手当及び賞与の有無についても文書の交付などで明示することを事業主に義務づけました(パート労働法6条1項、同規則2条)。
したがって、後のトラブルを避ける意味でも、入社時に、これらの労働条件については、書面で明示するようきちんと要求しましょう。

 

パート労働者への差別扱いは許されない
 パート労働者については、正社員との間に大きな待遇の格差があることが問題となっています。このため、07年にパート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が大改正され、差別的取り扱いの禁止や均衡処遇の努力義務などが盛り込まれました(08.4.1施行)。
■差別的取り扱いの禁止
 同法は、①当該職場の正社員と職務内容が同一で、②契約上または実態上期間の定めのない雇用であり、③人材活用の仕組みと運用が長期的に正社員と同一であるパート労働者は、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」とされ、賃金、賞与、退職金、教育訓練、福利厚生その他すべての待遇について、短時間労働者であることを理由として差別的取り扱いをすることを禁止しています(同法8条)。
■均衡処遇の努力義務
 「通常の労働者と同視すべき」とは言えないパート労働者についても、賃金は、通常の労働者との均衡を考慮して決定する努力義務が事業主に課されました(同法9条1項)。事業主は、パート労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験などに照らして、通常の労働者と均衡がとれるよう、賃金水準を見直したり、昇給制度を整備したり、職務手当・役職手当を整えることが求められます。
 ■待遇決定に関する説明義務 

 さらに、パート労働者は、事業主に、その待遇決定にあたって考慮した事項の説明を求めることができるようになりました(同法13条)。自分の待遇に納得がいかない場合は、事業主に説明を求め、適正な取扱いをするよう要求できます。

 

その他の権利
 パート労働者にも休憩や年次有給休暇の権利があります。
 労基法34条1項は、「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と定めています。
また、所定労働日数が週4日以下で所定労働時間が週30時間未満の労働者で所定労働日数が年216日以下の労働者でも、年次有給休暇がとれます(労基法39条3項)。


 

≪もうり栄子の県政さわやか報告≫

国も地方も破産寸前?!             県議会議員 もうり 栄子

 「おめでとう」の言葉もはばかれるほど、依然として厳しい景気の中で新年があけました。国では平成21年度の借金が53兆円、一方収入が37兆円ということで、62年ぶりに借金が収入を大幅に上回る台所事情となりました。一体この先どうなるのか、空恐ろしくなります。新政権の政策や財源確保の方向が定まらないので長野県も新年度予算がどうなるか、霧の中状態です。ただ言えることは県政も不況の波に見舞われ、税収が大幅におちこんでおり、借金増の予算をくまざるを得ない状況にあります。そこで、少しでも収入確保をということで、県職員宿舎の跡地を売り出したり、徴税強化をしたり、指定管理で県の業務を委託したり、県民負担を増やしたり。それにくわえて過日びっくりする出来事が。庁内放送で「年末ジャンボ宝くじが発売になりました。県庁内で販売しておりますので是非ご利用ください」のアナウンス!ええ、何?と一瞬思いましたが、そうです。宝くじの販売収益の一部が県の収入になるのです。お金になることは何でもということでしょうか。夢を売るようで、何かせち辛いような複雑な気持ちになりました。
 居合わせた党の県議で「みんなで買ってくれば当たるかなあ」と話したものの、先立つものが無いこと、県庁で買っても当たった試しがないということなので止めました。
 こんな状態なのに、無駄で危険な浅川ダムに180億円もつかう事業は粛々とすすめられています。いよいよ違法・不当な公金支出ということで建設差し止めを求め自由法曹団の先生方のお力もかりながら、住民監査請求と行政訴訟に踏みきります。元気いっぱい頑張る以外に道はありません。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。


信州しらかば法律事務所

HOMEご相談について弁護士費用について事務所のご紹介業務内容取り扱い事件役立つ法律情報署名のコーナーリンク集これまでの事務所ニュース

Copyright (c) 2009 shinshu shirakaba Law firm. All Rights Reserved.