1、最近、ようやく新聞やテレビで取り上げられるようになってきましたが、しらかば読者の皆さんにとっては、必ずしも知られていないと思いますので、改めてご説明します。
2、司法修習生というのは、司法試験に合格した後、一年間、弁護士・裁判官・検察官の実務を研修する者のことです。言ってみれば、法律家の卵ということになります。この一年間は修習に専念する義務があり、アルバイト等は禁止になっています。収入を得られないことから、月約20万円の給与が支払われています。
3、ところが、この11月から、給与の支払いが無くなり、その代わり、お金を貸し付ける制度になる予定です。これは、平成16年に裁判所法という法律が改正されて出来た制度です。
当時も、とんでもないことだと反対したのですが、小泉政権の時代だったものですから、改正を阻止することは出来ず、また、マスコミの理解も得られず、6年間施行を延長させることがせいぜいでした。
4、しかし、平成16年の法改正後、ロースクール制度が動き出しました。それまでは、大学の教養課程を終えた者は誰でも司法試験を受けることが出来ましたが、大学卒業後さらにロースクール(2年または3年)も卒業しなければ、試験が受けられないことになってしまいました。
今の時代、大学を卒業するのにも大変なお金がかかるのに、さらにロースクールまで卒業するとなると、普通の家庭の子供は、試験を受けること自体、とても難しくなっています。その上、試験に合格した後の修習中の給与が無くなるとなると、ますます経済的負担がのしかかることになります。
昨年、日本弁護士連合会が司法修習生に対しアンケートを実施したところ、平均で約320万円、最高では約1200万円もの借金を背負っているという実態が判明しました。その上、給費制が無くなると一年間の生活費を捻出しなければなりませんので、更に300万円程の借金が増えることになってしまいます。大変なことです。
5、このようにお金がかかるとなると、お金持ちしか法律家になれないことになってしまいます。普通の市民の感覚を持っていない者が、国民の権利を守るような弁護士・裁判官・検察官になれるとは思えません。
現在、弁護士会は、給費制維持を求めて、署名活動、国会議員要請等、様々な活動を行っています。8月31日には、長野市で市民集会を開き、200人以上の方々に参加して頂き、この問題の重要性を訴えました。
日本では、一度できた法律を変えることはなかなか難しいのですが、11月に予定されている給費制廃止を阻止すべく頑張っているところですので、読者の皆さんにも、是非ご理解ご協力いただきたいと思っています。
相 馬 弘 昭(弁護士)
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