準社員1名だけの整理解雇
平成23年9月29日、先輩弁護士らと弁護団を組んで闘ってきた整理解雇事件について、整理解雇の4要件全てについて判断を加え、解雇無効を訴える原告の主張をほぼ全面的に認める内容の勝訴判決を得ましたので、ご報告いたします。
本件解雇事件の特徴としては、原告が準社員という身分であり、被告会社には原告の他に準社員はいなかったこと、及び被告会社は30名の希望退職者を募集し、解雇予告の約2週間前に希望退職者が募集人員に達していたにもかかわらず、原告唯1人が解雇されたことが挙げられます。
被告会社の主張をくつがえす事実
被告会社は、関連企業の債務引受等により従前から厳しい経営状況であったところ、リーマンショックにより更に減収減益となり、不採算部署(原告の所属部署)を廃止する等の経営合理化策を実施したが及ばず、人員削減に踏み切らなければならなかった、原告は所属部署の廃止により剰員となったが、原告に配転可能な部署は2箇所しかなく、その2箇所も原告によって配転を拒否された等と主張しました。
昨今の不況の深刻さは論をまたないところであり、実際に被告会社の提出した決算書類からは、解雇日の約4月前の決算期には売上が前年比約6割にまで減少し、多額の損失を計上していた事実が明らかになりました。また、原告は、唯一人の準社員であるのみならず、小学生の子を持つ母親であるため夜勤ができないという事情がありました。
しかし、他方で、被告会社は、売上が激減したとする解雇日の約4月前の決算期においても、約4億3000万円の利益剰余金を計上しており、本件解雇当時は、高額の機械の受注が回復しつつありました。また、被告会社は、本件解雇通告の僅か6日後から派遣社員ないし請負会社の従業員の受け入れを開始し、その人数は解雇日までの間に22名に達しており、本件解雇後も増加する受注に対応すべく、受け入れを継続しておりました。
原告が準社員であったことについても、被告会社の就業規則では、準社員は退職金を除き、定年、退職、解雇等、全て正社員の規定を適用すると記載されております。また、被告会社の役員の尋問の結果、被告会社の主張とは異なり、同社は原告に対し、原告に勤務可能な条件での配転の提示をしていないことが明らかとなりました。
整理解雇4要件(要素)のうち3つを満たさず解雇無効
判決は、①人員削減の必要性については、本件解雇当時、被告会社の経営状態は相当程度に悪化していたものの、本件解雇の前後を通じて被告会社の受注状況はある程度改善傾向にあったこと、本件解雇の前の決算期は営業損益がマイナスであったのに対し、本件解雇時を含む決算期にはプラスに転じていたこと、本件解雇の前後を通じて派遣社員ないし請負会社の従業員を相当数受け入れていたこと等を認定し、原告唯一人を解雇すべき切迫した人員削減の必要性があったとまで認めることはできないとしました。また、被告会社の実施した正規社員から非正規社員への入れ替えについて、本件解雇を有効たらしめるための要素としての人員削減の必要性の有無という観点からみた場合(判決は、整理解雇の4要件を、4要素と記載しています)、かかる実態を安易に容認することはできないとしました。
その外、②解雇回避努力についても、原告の主張どおり、これを果たしていないことを認め、③人選の合理性についても、被告会社における準社員という地位は、パートタイマー等の雇用調整の容易な労働者とは終身雇用制の下で雇用されている点で本質的に異なり、会社との結びつきの面でも正社員に準じた密接な関係にあると解され、解雇の相当性判断に際しては、正社員と同様に判断するのが相当であるとしました。④手続の相当性については、原告に対し被告会社の主張を前提とする説明を一定程度実施しており、直ちにこれを欠くような事情までは認められないとしましたが、他の要素を満たしていないことから、解雇は無効であると結論づけました。
控訴審へ ~全面勝利解決に向けて~
被告会社の控訴により、平成24年1月に東京高裁で期日が開かれます。控訴審でも頑張ります。
|