事務所ニュースしらかば

しらかば 第84号

≪コラム(握手)≫
≪ひどい「弱肉強食社会」をつくる小泉流「構造改革」≫

 

≪コラム(握手)≫

 六月一五日、トンネル工事の現場を見学に行きました。場所は、最近、予想以上のスピードで土砂が堆積したということで話題になった美和ダムです。ダムに土砂が堆積するのを防ぐため、上流から約四㎞のバイパストンネルを掘る計画の工事です。
 工事の一工程は、掘削―発破―ズリ(土砂)出し―コンクリート吹き付けという具合ですが、予想以上のすさまじさでした。特に、発破は、百本以上のダイナ マイトが一斉に爆発した時には、トンネルの外で待機していても、爆音と振動がすさまじいものでした。粉塵もすごいもので、発破後、十分以上は白い煙のよう に、もうもうとしていました。
 現場には、現在、トンネルじん肺訴訟の原告となっている人たちも行っていたのですが、自分たちが工事をしていた頃に較べると、天国のような環境だと言っている原告もいました。
 確かに、昔と較べると作業環境がよくなったのは事実のようです。しかし、今回の見学で、トンネルを掘る限りは、粉塵は発生し、じん肺患者が出るのは避け られないという感を強めました。ハンセン病については、熊本地裁判決を契機に被害者救済制度が設立されました。じん肺患者についても、全国各地の裁判所で 和解が実現したのですから、訴訟をしなくても救済される制度の設立が必要ですし、また、可能です。

≪ひどい「弱肉強食社会」をつくる小泉流「構造改革」≫

 追いつめられる国民

私どもの法律事務所に、世相を反映した様々な相談者が訪れます。今の経済情勢は、デフレ不況を利用した欧米大企業による併合や、大規模なリストラ合理化 が押しすすめられる一方で、企業全体の99%を占める中小業者の経営はより一層深刻さの度合いを深め、倒産が急増しています。労働者もリストラや会社の倒 産によって職を奪われ、再就職もままならない状況です。
こうした不況下で、体力を失った中小業者にターゲットをあてて迫って来たのが「目ん玉売れ」「腎臓売れ」で世間を騒がせた日栄、商工ファンドなどのいわ ゆる商工ローンです。かれらは、出資法で定められた上限利率年29.2%ギリギリの高利で貸付ける業者ですので、2~3年取引が続けば貸付枠は1000万 円前後にまで膨れあがり健全な企業でさえも深刻な事態を迎えやがては倒産に至ります。

不況を食い物にするヤミ金業者の台頭


ところが、商工ローンを超える最悪の内容で台頭してきたのがいわゆるヤミ金業者です。その数は急速に全国規模で増えており、なかなか正体がつかめないの が実態です。かれらの実際の貸し出し金利は、年500%から2000%であり、これは、懲役3年の刑に処せられるほどの超暴利です。ところが、表向きは、 株式会社を冠したり、貸出金利を低利に装うなどして借入れを迫ってきます。

ヤミ金によって不法占拠された直後の部屋の様子

 最近受任した倒産事件のケースは、知らない間に工場に根抵当権の仮登記がなされており、各種念書などへの 署名押印も強要されて書かされていました。このため、支払が滞るやそれらを盾にヤミ金業者が差し向けた20名もの人員によって建物が占拠され、車両、機 械、事務用機器、家電製品、家具、嫁入り箪笥やその中にある着物に至るまですべてを持ち出されるという異常事態が発生したのです。通報を受けてきた警察官 は本人が承諾した形の書類があるのだから手が出せないとして全く対応しなかったようです。





破産宣告を受けた人にも貸付ける異常ぶり

ヤミ金は、個人に対しても迫って来ます。個人向けに送付されるダイレクトメールは、過去に債務整理をした人や、現在交渉・分割弁済中の人、さらには破産 した人にも送られてきます。そこには、保証人・担保は一切不要、即日融資、年利14%から29.2%等と甘い誘い文句が記載されているため、過去に破産宣 告を受け、もう二度とおなじ過ちは繰り返すまいと心に誓った人でさえも、借りてしまいます。

ヤミ金からどんどん送られるダイレクトメール

 その手口は、たとえば、最初にAという業者から返済日を10日毎に設定して10万円を借入れたとすると、 その返済日に合わせるように別のBという業者から次の借入の勧誘がきます。借り手としては、10日後の返済日までに金利だけでも1万5000円~5万円返 済しなければなりませんので、その資金調達が困難となります。そこで、高利とわかっていても、ついついBという業者からも同様に借入れてしまい、それをA 社の返済にまわします。次にまた、10日が経過してA社とB社に対する返済日が到来すると、2社分の利息3万円~10万円を今度はC社から調達せざるを得 なくなり、この繰り返しでどんどんと借入が増えてしまうのです。そして、支払が1日でも遅れるとヤクザまがいの取立が本人及び家族に襲いかかり平穏な生活 が一変してしまうという具合です。
ヤミ金が横行する素地は、小泉内閣のもとでより一層広がる危険性があります。


悪徳業者とのたたかいの先頭に立ちます

むろん彼らの行為は、刑罰法規さえも無視した法秩序を侵犯するものでありますから、被害者側から積極的に刑事告訴・告発するなどの厳格な対処をしてゆく 必要があります。ただし、地元の警察官の対応が「民事不介入」を理由に取り上げてくれなかったり、「借りた物は返すのが当たり前だ」などとして適切な対応 をしないことも問題ですので、被害根絶のためには徹底した取り締まりを求める運動も強化していきます。
また、これらの業者からは借入れないことが大切ですが、借りてしまった場合でも、公序良俗違反の高金利を支払う約束は無効ですので一切支払う必要があり ません。勇気をもって立ち上がれば、彼らは以外ともろいのが特徴です。通常の多重債務・倒産と同様にお早めにご相談ください。


小泉流「不良債権最終処理」の行きつく先

最近のもう一つの特徴は、これまで返済を猶予してくれていた金融機関が強引に貸付金の回収に乗り出し、そのために倒産してしまう事例が増えていることで す。諏訪地方のある旅館経営者は、バブル崩壊後のお客減少のため銀行への返済を利息だけにしてもらって、これまで必死で経営努力してきました。しかし、最 近になって突然、「もう元本返済猶予できない。今年から10年間で貸付金元本1億円を完済せよ」と迫られ、経営を続けられなくなりました。土地建物を売却 しても多額の借金が残り、保証人にまで大きな迷惑が及びます。
小泉内閣は、「不良債権の最終処理で国民に痛みを求める」と言います。
不良債権と言っても「バブル型」不良債権は、国民の血税を大量に注ぎ込んだ銀行への公的資金投入・銀行の大企業に対する債権放棄により、処理は終わっています(99年12月政府発表)。
今問題の不良債権は、長引く不況で業績が悪化し、運転資金のために借り入れた資金が返したくても返せなくなった「不況型」です。業績好調黒字、借入金元 金と利息が約束どおり支払われているごく一部の取引先以外はすべて不良債権で、中小企業への融資の大半がこの「不良債権」に計上されているのです。
銀行が「取立ては厳しく・追加融資には応じない」方針をとる結果、20万から30万社が倒産に追い込まれ(昨年の倒産件数は1万8千)、130万人の失 業者(現在348万人)が新たに生れると予想されています。そうなると次に大きな問題になるのは住宅ローンです。失業者が増えると住宅ローンの破たんは確 実に増え、マイホームの競売が大きな社会問題になっていくでしょう。

許すな!アメリカ流「構造改革」

小泉内閣が「構造改革」のモデルにしているアメリカでは、「規制緩和」の大号令の下、ここ10数年来、大企業・大金持ちを優遇し、リストラを奨励する政 治が行われています。その結果、ごく一部の大金持ちが土地を買い占めて部外者立入禁止の街をつくる、その一方で庶民は、「就職してもホームレス」医療保険 未加入者数千万人という現実の中で凶悪犯罪がはびこり、2百万人(人口比で日本の20倍)が刑務所などに収容されています。このようなごく一部の富む者だ けがますます富み、大半の国民をますます苦境に追い込む「構造改革」にストップをかけましょう。
長引く不況を克服する唯一の道は、6割の比重を占める個人消費が大きく伸び、それによって企業の業績を回復させることです。そのためには、消費税減税など働く者の懐を直接暖めることを一貫して主張している日本共産党の大きな前進が最大の保障となります。

(しらかば 2001.7)


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