事務所ニュースしらかば

しらかば 第98号

≪あいさつ≫
≪コラム(握手)≫
≪2004年を振り返って≫
≪災害続く北陸信越 議席喪失の重み実感 木島日出夫≫
≪やっぱり政治を動かすのは住民の力 もうり栄子≫

 

≪あいさつ≫

明けましておめでとうございます

 昨年8月から、「林百郎法律事務所」の名称を、「信州しらかば法律事務所」と変更しました。
 1947年に林百郎弁護士が事務所を開設以来57年間、慣れ親しんでいただいた『林百郎』という名を惜しんでいただく声もありますが、大方は、好評を頂いております。
 1992年6月、林百郎弁護士(元代議士)が亡くなられて12年、事務所では、この間何度か名称変更の論議がありましたが、見送られてきました。何時までも亡くなられた方の名を使用するのも問題であるとして、昨年、名称候補を公募の上所内で論議検討し、いくつかの中から投票で選び「信州しらかば」という名称を決定しました。
 「しらかば」のイメージは、ひとつには、高原のさわやかさがあります。法律事務所にこられる方はいろんな悩みごとを抱えてこられるわけですから、その人たちの相談に乗り、解決の方向を見い出して、さわやかな気持ちホッとした気持ちで帰っていただける、そんな法律事務所でありたいという願いをこめています。
 ふたつめのイメージは、「しらかば」は、冬の寒風に毅然として耐える強さがあります。依頼者の問題解決には、相手との厳しい折衝、困難な訴訟等に耐える強さが必要です。法律事務所が、依頼者のこの闘いに耐え得る強さの支えになるという期待に応える願いを込めています。
 「信州しらかば法律事務所」と名称を変更して初めての新年にあたり、名称変更の経緯を紹介し、当事務所は従前同様地域の皆さんの生活と権利を擁護するため、心を新たに所員一同奮闘することを誓って、新年の挨拶と致します。
今年もよろしくお願いします。
弁護士 菊地一二

 

≪コラム(握手)≫

 ◇寒いこの季節、大地から湧き出る天然温泉は誰にも喜ばれるものです。諏訪地方は、昔から諏訪湖の回りに何ヶ所かの温泉釜をもち、人々の生活を潤してきました。◇私の住む町は新興住宅地で少々高台にありますが、ここでも共同浴場を造り、下町から温泉を上げて利用しています。◇さて、浴場は温泉の効能はもちろんですが、恰好の生活交流の場でもあるわけです。昨日も「膝が痛くて痛くて困っている」と話が出ると「今度何町に出来た何医者が、筋肉・靭帯等が専門で、保険も利くって言うから行ってみたら」とすぐ返事が返って来るわけです。初診料・駐車場まで細かに話しています。裸で一同会しているので、遠慮会釈なく誰もが話を聞けます。健康・漬物・美容・年金・孫のこと・家庭菜園・身近なニュース・はたまた「ためしてガッテン」の話題まで。
 ◇風呂上りは、月と星を見ながら各自家に帰ります。この空気と風がまた何ともいえない心地良いものなのです。
 ◇世界に誇る憲法九条がねじ曲げられる。消費税が10パーセントに増税される。「俺俺サギ」が年寄りを狙う。親が幼い子を虐待する…。狂った日本の中で、庶民のささやかな憩いの場となる温泉です。

≪2004年を振り返って≫

今年の事件あれこれ

多重債務事件
 諏訪管内における破産・個人再生事件数は、過去2年間の比較で破産が若干減り、個人再生事件が66%ほど増えました。両事件を併せた数は、ピーク時の一昨年とほぼ同数で推移しました。この根底には、深刻な雇用・失業問題もありますが、高収益を上げ、暴利を貪り続ける高利業者の存在を許す社会が何よりも問題です。
 《多重債務者を生む社会》
 この1年間、ヤミ金規制法の施行や商工ローン裁判の最高裁勝利など貸金業者との闘いは前進しました。しかし、利息制限法の上限利率(年18%)ギリギリの高利貸付で利用者の拡大を図る銀行系ローンカードの台頭や、コンビニのATMなどで24時間いつでも何処でもキャッシングできる環境も生まれてきており、新たな被害者が後を絶ちません。多重債務社会の撲滅まで、まだまだたたかいは続きます。
 《新手口の詐欺にご注意を》
 名簿業者による顧客リストの売買などによって流出した名簿を悪用し、架空な請求をする事例が後をたちません。また、まとまった資金を低利で融資すると持ちかけて、多重債務者より、逆に金を騙し取る空貸し事件や、老人や主婦をターゲットに、警察官等を装って電話し、「貴方の身内が交通事故を起したから、今すぐ示談金を振り込め」などと申し向け、金銭を騙し取るオレオレ詐欺の横行など、かつては考えられなかったような悪質な事件が多発したのも特徴的でした。
 いずれにせよ、こんな脅しや詐欺が横行する社会は許せません。

労働事件
 《退職金を懐に入れた事業主に喝!》
 中小企業のための国の退職金制度(中退共)を利用していた事業主が、本来、退職した従業員が受け取るべき退職金を横取りする事例が2つありました。事業主は、会社が掛金を負担していたのだからもらうのは当然と主張。いずれも提訴となりましたが、うち1件は、提訴直後に支払われて解決。もう1件は、判決を得て強制執行に着手。執行を受けた事業主曰く、「こんなことなら早く支払っておけば良かった」・・・。
 世知辛い世の中、制度の趣旨を理解しない事業者や、知っていても事業資金に使ってしまう不届き者には喝!

少年事件
 集団暴行事件でリンチを受けた少年自身が損害賠償請求訴訟を起す事例は希です。飯田で発生した集団リンチ事件では、被害を受けた少年が、事件後PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみながらも提訴し、訴訟を通じて立ち直っていった事件です。加害少年らが次々と謝罪した和解の場を離れた後、「これで終わった」と大泣きした被害少年の姿がとても印象に残る事件でした。
 《解決の方程式》
 この事件を担当した毛利(弁)は、少年事件を加害・被害少年の双方の立場からいくつも取り組んだ経験をもとに、「喜怒哀楽ノートから自立への道を」と題する講義を信州大学の学生達にしました。
 そこでは、苦しんでいる少年が元々もっている潜在的な回復力を引き出すことが重要であり、そのためには、少年が生まれてから今日までに親や周囲の人たちとの間で感じた喜怒哀楽のすべてをノートに書き綴ってもらう作業が有効であるというのが持論です。その作業を通じて、喪失した自己肯定感や他人をいたわる感情の回復を促し、被害者に対し心から詫びることができるようになるというもの。その気持ちは、それがまた被害者の心を和らげ、加害少年の再出発への励ましとして返ってくる、というものです。
 ライフワークとしての講演活動もまだまだ続きそうです。

医療過誤
 異常なく生まれてきた子が2ヶ月後に脳性麻痺を発症。出産時の医療行為に原因があったとして母親が損害賠償訴訟を起しました。裁判では、医師の説明義務違反により妊婦に不安を与えたとして20万円の慰謝料が認められました。医師の説明義務の重要性があらためて問われた事件でした。 

交通事故
 信号待ちで停車中に追突された被害者が頸椎捻挫の傷害を負い、長期間の治療を余儀なくされました。ところが、保険会社は、追突のショックは殆どなかったのだから治療期間が1年余に及ぶことは考えられないとして治療費の支払を打ち切り、示談を迫りました。裁判では、被害者の請求がほぼ100%認められ満足のいく結果となりました。被害者の女性は大喜びです。納得のいかない示談に応じなかったことは何より重要な判断でした。皆さんも示談できないときは、気軽にご相談下さい。
 
最高裁新判例
 農業委員会の許可なく農地の賃貸借契約をし、地代を払って農地として20年以上占有耕作してきたことに関して、最高裁は、農地法3条の許可の必要なく、時効により賃借権取得できるという新しい判例を出しました。(菊地担当事件・判例時報NO1871【12月11日号】掲載)

トンネルじん肺

昨年の4月27日、筑豊じん肺裁判で、最高裁は国の責任を初めて認めました。
これを受けて、トンネルじん肺裁判は、全国各地で、国の責任を認めさせるための立証を行っています。
 長野でも、今年2月から、いよいよ、証人尋問が行われることになります。

その他のできごと
(平 和)
憲法問題に対する取り組みとして、「戦争はいやだ、平和を守ろう」集会や映画「父と暮せば」上映会など、無党派の人達を巻き込んだ活動が広がった年になりました。事務所が(大量に)製作した「I Love 9条」バンダナも、好評をいただいて全国各地に広がり残り僅かとなっています。
(会 務)
 昨年は県弁護士会の副会長の会務に追われた相馬弁護士が、今年は弁護士会十県会の事業の一つである本の制作を行うことになりました。これは10年ほど前には毛利弁護士が約2ヶ月間一人合宿のように籠もって仕上げたという大変な事業です。昨年よりも事務所にいる時間が少ないんじゃないですかと言う所員の声に、「いやそんなことない、去年よりはいるよ」と笑って答えながら、多忙な日々を送っています。
(事務局のうごき)
 森さんが理事長をやっている「ひまわり保育園」は、園舎の工事が始まり園児の募集も済んで4月開園にむかっています。「少しは仕事もしようね」と言われながら、楽しそうに飛び回っている森さんです。
 中国人強制労働訴訟の関連では「悪魔の飽食」コンサート長野公演に事務局2名が合唱団として参加しました。
 恒例となった「りんご狩り」では、新潟中越地震の被災者のみなさんへの支援の一環として、その収穫の一部を送りました。
(御 礼)
 司法改革の波が押し寄せる中で、弁護士報酬の「敗訴者負担反対署名」には3783筆という大きなご支援を皆さんからいただきました。おかげさまで第161回臨時国会の閉会に伴い「敗訴者負担法案」が廃案となりましたことを併せてご報告します。他にも「塚原青雲高校」約2000筆、「憲法9条を守る県民過半数署名」約1000筆(継続中)など、今年も多くの方のご協力をいただきましたことに厚く御礼申し上げます。
 弁護士の大増員など法律事務所を取り巻く状況も大きく変わろうとしており、厳しい弱肉強食の競争の時代の影響は事務所にも及びつつありますが、常に弱者の立場に立ち社会正義の実現にむけて力を尽くすことをあくまでも事務所の基本として、今後とも頑張っていこうと思います。


≪災害続く北陸信越 議席喪失の重み実感 木島日出夫≫

災害続く北陸信越、議席喪失の重み実感
 2004年は、あっという間に過ぎていったというのが、実感だ。
 1月の日本共産党大会で新しい綱領を確定し、7月参院選での前進のために、2004年前半は、北陸信越各地を駆け回る日々が続いた。選挙では、「2大政党つくり」の壁を破れず、日本共産党は大きく後退する結果となった。
 参院選後は、それこそ息つく暇もないような状況だった。
 7月13日の新潟豪雨災害に続いて、18日には福井豪雨災害。8月9日には福井で、下請け労働者5人が死亡するという、わが国原発史上最悪の関電美浜原発3号機事故が発生した。台風災害が、北陸信越各地で猛威をふるい、熊の出没も相次いだ。
 そして、10月17日投票で新潟・富山両県知事選挙が終わった途端に、10月23日新潟県中越大震災が起こったのだ。
 各地の被災地では、思うように災害復旧が進まない中で、新年を迎えている。
 わが国の政治が、こうした被災者のためのものになっていない実態を見るにつけ、衆議院での議席を失った重みを痛感する毎日だ。


≪やっぱり政治を動かすのは住民の力 もうり栄子≫

 田中知事によるあの有名な「脱ダム宣言」が発せられてからはや、3年10ヶ月。途中の不信任をへて、圧倒的多数で再選され、もうダム問題は決着がついたと思う方も少なくないでしょうが、それがなかなかたいへんなのです。
 象徴的には長野の淺川と下諏訪の砥川。特に今年はいくつも台風が上陸し、7月の新潟、福井の災害などのように、降り始めからの雨が300ミリ、400ミリという諏訪地方の年間降水量の3分の1も一度に降る出来事が起こるなかでは「だからダムだ」という声も。淺川では台風23号で広範にわたって冠水。原因は本流の千曲川の流量がふえ、淺川に逆流するために樋門を閉めたことによる内水災害。ダムでカットできる量はわずか13%だというのに、11回重ねてきた流域協議会ではいまなお大もめ。
 一方下諏訪の砥川流域協議会は2003年6月発足以来この11月まで16回を重ね、100年に一回降る雨を想定して膨大な量の水が出るという対応に汲々とするのでなく50年に一度の洪水を想定し、そのときの水量に見合った河川改修をまず先行させ、現実的な安全を担保すべきという声が多数をしめるなか、公聴会もリードし、河川整備計画が策定できる運びに。関係者の熱意と粘り強い努力の中で「脱ダム」に道すじが。政治は綱引き。住民の運動が上回ればやっぱり道は開けます。現地で議会の論戦を支えていただいた皆さんに感謝!


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