事務所ニュースしらかば

しらかば 第99号

≪あいさつ≫
≪憲法を改正していいの? 弁護士 相馬弘昭(憲法9条を守る原村民の会結成集会)≫
≪遺留分権の具体的実現方法 金銭支払を命じた事例 遅延損害金の支払義務は判決確定から発生するとした(長野地裁諏訪支部H17年1月27日判決)≫
≪四選を目指して 木島日出夫≫
≪毛利栄子の ~県政さわやか報告~≫
≪ひまわり保育園開園≫
≪アンコールワット・ホーチミンの旅≫

 

≪あいさつ≫

 憲法記念日の5月3日に計画されている「戦争はいやだ やっぱり平和がいいね 世界に輝け9条! 諏訪地方憲法集会」(主催:諏訪地方憲法集会を成功させる会)で、イラク人質事件の高橋菜穂子さんが記念講演をします。
 高遠さんは、田部知江子弁護士とのインタビューの中で、「俺らには銃を取る方法しかない。」という武装グループとの間で、「あなたたちは命を捨てても守りたいと言うけれども、私はあなたの命がなくなることは嫌だ。あなたがいとしいと思っている家族の命がなくなったと聞くことももう嫌だ。私はどの命もこんなかたちでなくなっていくのが嫌だ。そういうことではなくて、もっと手を取り合って協力したものをやりたい。そのために他の方法を見つけてくれないか。」と「今井君がびびるほど興奮してまくしたて」、「とにかく信じる。私はこんなに彼らのことを愛しているんだ、そこに偽りはなかったんです。・・・この人たちだって普通の人間として被害者だから、同情しなければならない。私はその気持ちをぶつけたんです。わかってくれ、敵じゃないんだ。だから君と友だちになりたい。友だちだから言ってるんじゃないか。」と真剣に話し合ってきたこと、このような武装グループとの対話を繰り返すことによって生きて帰ることができたことなど、信頼と対話の大切さについて語っています。
 また、憲法9条については、「今井君は、『これが憲法9条だよな』みたいなことを言っていた。」と「9条を実感した」ことも述べ、「武器を使わないで非暴力で分かり合う、紛争を解決する、個人レベルでも。」と訴えています。
 いま、自民・民主両党と国会憲法調査会が、いっせいにこの4月末に改憲案を発表するなど、海外でのアメリカの戦争に自衛隊を実践参加させるための憲法改正が急ピッチで進められようとしています。「9条を守れ」の声を広げ、この動きをとめるために、ぜひ高遠さんの講演をお聞きください。

 

≪憲法を改正していいの? 弁護士 相馬弘昭(憲法9条を守る原村民の会結成集会)≫

 2月28日、原村で、憲法改正についての話をする機会がありました。そのダイジェスト版を書くことにします。
(憲法改正の動き)
テレビ、新聞等の報道で、ご承知かとは思いますが、9条を中心とした憲法改正の動きが具体化しています。これまでにも、自衛隊の存在・活動が憲法9条に違反しないかという点は、長年の間議論されて来ました。また、それに関連して、憲法9条は実情に合わないから、改正すべきだという意見もありましたが、その都度、立ち消えになっていました。
しかし、ここに来て、与党の「憲法改正国民投票法案」(憲法を改正するための手続を定める法律)が完成したことに見られるように、憲法を改正しようとする動きが急激になっています。これ程、改正が具体化するのは、戦後、初めてのことです。
他方、この憲法改正の動きに反対して、作家の井上ひさしさんたちが「『九条の会』アピール」を出し、また、全国的にも長野県内でも、憲法9条を守ろうとする動きが活発になっています。
そこで、憲法改正が良いか悪いかを判断する前提として、そもそも憲法の内容はどの様なものであるのか、憲法改正にはどんな手続が必要なのか、また、どのような理由から憲法改正をしようとしているのか、を良く理解し、考える必要があると思います。
(憲法の基本理念)
まず、憲法は誰に対する(誰が従うべき)ものかを考えることが重要です。歴史的にみて、すべての権力を持っていた君主(国家権力)は、国民の権利・自由の侵害を繰り返しました。国民は、近代市民革命(フランス革命など)という闘いを通して、自分たちの権利・自由(基本的人権)を勝ち取りました。基本的人権の保障こそが最も重要なものであることを宣言したものが憲法という訳です。ですから、憲法は、国家権力が国民に対して悪さ(人権侵害)をしないように、基本的な枠組を定めたものと言えます。この点、例えば、民法という法律が、物の売り買い等について、私たち一般人の間のルールを定めているのとは、大きく違います。
では、日本国憲法の基本原理は何でしょうか。もちろん、基本的人権(人権保障)の原理が一番重要です。憲法の目的と言っても良いでしょう。憲法でも、幸福追求権(13条)、信教の自由(20条)、表現の自由(21条)、生存権(25条)など、様々な人権を具体的に定めています。
しかし、基本的人権は大事だよと言ってみても、それが守られるようなシステムが無ければ、絵に描いた餅です。人権を守るためには、国民の意思が反映されるようなシステムが必要ですし、国の政治のあり方を最終的に決めるのは国民とすることも必要です。これが、民主主義あるいは国民主権の原理と呼ばれるものです。
また、戦争状態では基本的人権が守られるはずがありませんから、平和主義の原理は、基本的人権を守るための当然の要請となります。
平和主義の原理の具体的な表われが、憲法9条です。9条は、1項と2項に分れていて、その解釈の仕方で、色々な考え方が出て来ます。ただ、外国からの急迫・違法の侵略に対して自国を防衛するために必要な一定の実力を行使する権利、すなわち、「自衛権」は国際法上も認められています。これは、個別的自衛権とも言います。この個別的自衛権を超えて、いわゆる集団的自衛権(外国から自国への侵略を要件としない)を正当化(憲法上の根拠を与える)することに、憲法9条を改正しようとする大きな目的があるのは間違いありません。
(憲法改正の手続)
次に、憲法改正の手続を簡単にお話します。例えば、憲法9条を改正しようとする場合、まず改正案を国会で審議して内容を決定する必要があります。これを国会の「発議」と言います(各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要)。続いて、国民投票を行なって、過半数の賛成も必要となります。国民投票の手続を定めた法律は、今はありませんので、憲法を改正するためには、この法律を新しく作る必要があります。
国民投票について、一番の問題は、投票方法です。つまり、例えば、4つの改正案があるとした場合、1つ1つの改正案ごとに賛成反対の意見を述べられるのか、それとも、4つまとめてしか意見を述べられないのかということです。国民の意思を反映させる民主主義の考え方からは、どちらが良い投票方法かは、明らかだと思います。
(憲法改正論の根拠)
憲法を改正することに賛成の立場からは、次のような根拠が出されます。字数の制約があるので、項目と簡単なコメントを述べるだけにします。皆さんで考えてみて下さい。

① 加憲論
新しい人権(環境権、知る権利など)を憲法に明記すべき。新しい人権についても、これまでの裁判の中で、相当程度、権利の内容は明確になって来ているのだが?
② 国際貢献論
(国連の常任理事国入りも念頭に)一定の武力行使も含めた国際貢献をしなければ、他国の信頼を得られない。果たして、本当にそうなのか?(憲法前文の第1段・第2段を読んで見て下さい。日本の国際貢献のあり方が書かれているのでは?)。
③ 北朝鮮脅威論
今の情勢からして、現実性あるのか?
④ 押し付け憲法論
アメリカから押し付けられて出来たという発想。形式論では?(天皇主権から国民主権になり、また、基本的人権も保障した憲法を国民が望んでいたのでは? 旧国家権力から見れば押し付けかもしれないが、国民からすればどうか?)

(しらかば 2005.4)


≪遺留分権の具体的実現方法 金銭支払を命じた事例 遅延損害金の支払義務は判決確定から発生するとした(長野地裁諏訪支部H17年1月27日判決)≫

 現行の相続制度には、遺留分の制度があり、親の遺産に対しては(配偶者が死亡している場合)、子供は相続分の2分の1の権利があるとされていますので、子供が5人いれば各人は10分の1の権利です。これは、親が遺産を特定の相続人に贈与や遺贈をした場合、外の相続人が、10分の1に達するまで、贈与や遺贈をした財産をとり戻すことが出来るということです。この権利を行使するか否かは自由です。権利を行使する場合には、贈与らの事実を知ったときから1年以内に内容証明郵便などで、その権利を行使する旨の意思表示(遺留分減殺請求と言います)をしなければなりません。
 この減殺請求をすれば、その対象の財産に対して、遺留分権の割合による共有持分を取得したことになります。これを具体的に分けるには、話合いによる解決が出来れば問題がありませんが、話合が出来ない場合には、共有の持分確認あるいは、遺留分権の割合による所有権移転登記手続請求の訴訟を提起し、その判決に基づいて、共有物分割の手続きをとることになります。これでは手続きが煩雑になり、必ずしも当事者に満足を与えることにはなりません。それで受遺者が、裁判所の定めた遺留分の割合による相当額の価格弁償を求めた場合には、裁判所は、弁償額を定め、受遺者が弁償額を支払わなかったことを条件として、遺留分権の割合による共有持分の所有権移転登記手続きを命じることになっています。
 本件では、遺留分権利者も相当額の価格弁償を求めており、原告被告側とも価格弁償の相当額について争いがなかったため、その金額の支払いを命じたものです。
 民事裁判では、金銭の支払いを命じる場合には、その履行期以降については、年5分の割合のよる遅延損害金の支払いを命じることになっています。本件では、原告は遺留分減殺請求をしたときからの、遅延損害金の支払いを求めていました。裁判所は、弁償額は事実審口頭弁論終結時〔審理の最終日〕を基準として算定され、精算金の支払いは裁判所が判決によって命じることになっていることから、遅延損害金の支払いは、判決が確定した時とするのが相当であるとして、原告の遺留分減殺請求時からの遅延損害金請求を認めませんでした。(弁護士 菊地一二)

(しらかば 2005.4)


≪四選を目指して 木島日出夫≫

政治の潮目が変わり始めた
 小泉政権の新年度予算案が、23日成立した。3月末まで1週間も残して、戦後4番目の早期成立だという。橋本元総理の1億円ヤミ献金問題もうやむや、増税や介護・障害者福祉の改悪など年間ベースで7兆円もの負担を国民に押し付ける予算案だったが、緊張感ある国会論戦は見られなかった。
 「これほど実のない国会論戦は過去になかったのではないか」と渡部恒三前衆院副議長。河野洋平衆院議長は、その背景をこう指摘する。「今の自民党と民主党は『保保』。体質も考え方も非常に似ていて、対立にならない。国会論戦でも同じ者同士が細かい違いを突きつけあっている感じがする」
 二度の国政選挙で「2大政党」状況になったが、「同じ自民党政治の枠内では政治は変えられない」と日本共産党は訴えてきた。いま、それが国民の目にも見えるようになってきたのではないか。市町村合併に伴う各地の増員選挙で、定数1や2のところで日本共産党が勝利しているのも、それを示している。
 しかし、国会の中では、自民党・民主党・公明党による憲法九条改憲、消費税大増税が声高に叫ばれている。
 いま、政治の潮目が変わり始めてきている。この流れを本流にしなければならない。
                               (05・03・25記す)


≪毛利栄子の ~県政さわやか報告~≫

県民の心によりそう議論を

 この原稿が活字になって皆さんのお手元に届くころにはもう、県議会も終わっていることでしょうが、知事の泰阜村への住所移転問題にかかわって総務委員会が止まっており、本会議が開会できないので、県庁を離れられないまま待機しています。
 この問題は知事が自分の好きな自治体に税金を納めたいと小さい村ながら福祉重視で頑張っている泰阜村に住所を移転したことから始まったこと。選挙人名簿が長野市と泰阜村に二重登録されたことで長野市から裁判をおこされ、結果は実態がどこにあったかで、長野市に決まり、住民税も長野市に納めることになって、最終的には知事の住所も両親の住む軽井沢に移したことで一件落着と思われましたが、裁判費用が県として約130万円、泰阜村が80万円かかったことで、常にあら捜しをやっている議員たちから「あれだけの大騒ぎをして何の利益があったんだ。これが知事の言う県民益か」と追求され、知事べったりと議員から攻撃の的になっている経営戦略局長が、「県民益にかなっている」と言いはったことから起こったもの。県民の皆さんからは知事も議会もどっちもどっちと批判が。まさにその通り。日本共産党県議団はこんなことで予算議会が混乱し続けることは県民理解が得られない。双方が大人の対応をして収拾し、早く会議を再開し、県民の切実な要望をかなえるための真剣な議論をすべきと要求。県政改革は道半ば。住民不在の議論はもうやめるべき。(2005年3月22日)


≪ひまわり保育園開園≫

 2004年7月、社会福祉法人の設立認可を受け、保育園建設を進めてきましたが、4月1日、「ひまわり保育園」が開園しました。
 新園舎は木造平家建てで、大黒柱や外壁羽目板などはすべて岡谷産の檜、全体の約70%を地元産を使った、「木の香りがただよい、温かみのある保育園」です。
 自己資金調達については、500人を超える人々から寄付をいただきました。
 「子供たちに良い絵本を」と図書の寄付。読書アドバイザーの人達による、紙芝居や絵本の読み聞かせ会が開かれます。
 使用する布おむつも全部寄付。洗濯はボランティア。シンボルマークは、絵本画家Sさん、門柱看板は、当事務所Kさんの作です。法人設立・建物など必要な登記手続は、青年司法協会有志のボランティア。これは、ほんの一端ですが、多くのみなさんの「善意のかたまり」ともいえる保育園です。
 子供たちの心に寄り添い、一人一人に目の行き届いた保育園をめざします。今後とも、ご支援・ご協力をお願いします。 森


≪アンコールワット・ホーチミンの旅≫

(2004年12月22日~12月29日)
弁護士  毛 利 正 道

アンコールワット蓮池前にて
「生きている木と石」を実感 カンボジア アンコールトムにて



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