これまでに取り組んだ事件

立山大日岳訴訟判決

1.2006年4月26日、富山地方裁判所において、大日岳事件の判決がありました。提訴から4年の審理を経ての判決でした。
 この事件については、何回か「しらかば」でお伝えしましたが、改めて、事件の概要からお話しします。
2.平成12年3月5日午前11時25分頃、北アルプス立山大日岳山頂付近の雪庇(せっぴ)が崩壊し、発生した雪崩に巻き込まれた学生2名が死亡しました。
 文部省登山研修所が主催する「大学山岳部リーダー冬山研修会」中の事故でした。この研修は、全国の大学の山岳部等のリーダー等を対象として、リーダーとしての資質を高めるため、日本の一流の登山家を講師として実施されているものでした。
 ところが、研修中の学生・講師らは、雪庇上で休憩していたところ、その雪庇が崩落してしまいました。雪崩に巻き込まれた学生9名のうち2名が行方不明となり、後に遺体で発見されることになりました。
3.なぜ、このような事故が起こったのでしょうか。登山中の事故は自己責任であるという考え方もあります。しかし、本件の事故も学生の自己責任といえるのでしょうか。
 この事故は、通常の登山と異なり文部省主催の研修中の事故です。ある意味では、学校の授業に類似するものであり、講師と研修に参加している大学生は、先生と生徒という関係ともいえるものです。
 また、当然、冬山には雪庇ができます。雪庇は、山の尾根の風下側に形成されますが(吹き溜り状のものと、「ひさし」があるものがある)、一見しただけでは、どこが本当の尾根なのか見分けがつきません。ですから、夏山の状況を充分に把握しておくことはもちろん、事前に充分な下見をしておく必要があります。
 ところが、講師たちは事前の調査をしていませんでした。自分たちの経験だけから、何も考えずに、雪庇部分に入り込み、大勢の大学生を休憩させたのです。
4.しかし、国は責任を認めないことはもちろん、謝罪もしませんでした。このような国の姿勢に接した遺族は、国の責任を問うために、提訴に至りました。
 平成14年3月の提訴以来約4年間の審理をしてきましたが、遺族は横浜と兵庫県尼ケ崎、弁護団は長野、裁判所は富山というように、バラバラであり、打ち合わせには非常に苦労がありました。また、弁護団も現地調査の為、何回も大日岳に登りましたが、日頃運動不足ですので、息も絶え絶えの状態でした。
 原告、弁護団、支援者の苦労が実って、判決は、原告の主張を全面的に認めるものでした。
5.ところが、国は、5月2日早々と控訴しました。今度は、名古屋高裁金沢支部に舞台が移ります。
 気を引き締めて、第一審の判断が覆されることのないようにしなければなりません。  弁護士 相馬 弘昭
(しらかば 2006.7)


大日岳訴訟全面勝利和解を勝ち取る! (2007.10)

 

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